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雨の橋

車で取引先のところへ向かった。
外は本降りの雨であり、気温はかなり低い。
少しミゾレも混じって来た。

ブルーのビニル合羽を着たオバチャンが、自転車を押している。
顔は殆どフードで隠れているが、何故か一瞬目が光り、
チラリとこちらを見た。
太っている。60歳くらいだろうか。

こちらは暖かい車の中で、雨も侵入しない。

今日は寒そうだ。
もっと寒い日もあるし雪の日もあるが、
今日くらいの中途半端さが最も寒いのではないか?
これ以上寒いと、外を歩いていて
どこか「大変なことをしている自分」に充実感があったりする。
「スゴイ寒さの中で外にいる自分」を肯定出来るのだ。
自分に負荷を与えることは、なんか「いいこと」のような気がしてしまう。
ま、そういうふうに教育されてぼくは大きくなった。
だから、かなり寒いと自分を「エライね」って褒めることが出来るのだ。
今日はそこまでの寒さでは無い、そのギリギリ一歩手前というところか。
「この冬一番の寒さ」とか「猛烈に厳しい寒波」などとニュースが言いそうにない。
ましてや西日本は暖かいらしいので、ただでさえ「寒いね、大変だね」と言われる北国とは異なり
「どうせ東京の寒さなんて大したことない」という世間の常識の中、
オバチャンは黙って自転車を押す。
帰宅しても「すごい寒かった!!」と大騒ぎは出来ないだろう。
だから、今日は、きっととても寒いのだ。
人々が理解し共感してくれたら、その寒さは甲斐がある。
耐え忍ぶ甲斐の無い寒さほど寒いものはないだろう。

雨なのに自転車は結構見掛ける、そしてその多くが女性だった。
若い女性の方が多い。
そして、みな脚を出している。
そして、みな黒のストッキングだ。
パンツ姿の自転車女性はほとんど見なかった。

黒ストッキングの流行は素晴らしい。
女性の脚のラインほど美しいものは、そうそう無い。
勿論なま足でも素晴らしいのだが、
黒いストッキングによって抽象性が増している。
生々しさが消えて、美しいラインだけがシルエットのように浮き上がっている。
自転車に乗っていると、歩いているより膝に角度がついており、
それが更に輪郭線の抽象性を高めている。

脚を目撃して、ただにやけて「ええで、ええで」と言っている姿をそのまま文章にする勇気がぼくには無い。
それで仕方なく抽象性がどうしたとか、シルエットがどうとか、もっともらしいことを言っている。

ただ、どちらかというと脳裏に残っているのは
雨の中、黙って自転車を押していたオバチャンの方だ・・

これは一体、どうしたものか。

錦糸町と亀戸の間にある川に架かっている橋の上でオバチャンをみた。
その橋は、川の上を半円状にアーチを描いている。
つまり、その橋を渡るには、結構傾斜を登って下る。
橋のこちら側から向こう側が見えないくらい盛り上がっている。
自動車だと途中で発進するのに、後退しないよう神経を使うくらい傾斜している。

その坂を、オバチャンは黙々と自転車を押して登っていた。
オバチャンの後ろに川が見えた。
雨が降りかかって、川面がざわざわしていた。
遠くは霞んでいる。

写真に撮りたい光景だった。

自転車を押すオバチャンに何かを感じた。

ひと言でいうと、「あ、生きてる」としか表現しようがない・・




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